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スマートフォンとクラウドを利用したインタラクティブディスプレイシステム

本研究では,ディスプレイを窓のようにして仮想空間を覗き込むような感覚を実現する,インタラクティブディスプレイシステムを提案する.提案システムでは,スマートフォンと標準的なPCおよびディスプレイといった汎用的な装置とクラウドを利用して,簡易的な装置立てによりCAVEシステムのようなディスプレイシステムを構築する.ユーザが持つスマートフォンのカメラによりARマーカとの位置関係をリアルタイムに取得し,ユーザの移動に合わせて映像をリアルタイムに描画することで,強い没入感を提示可能なシステムを実現する.

近年,Oculus RiftをはじめとするHead-Mounted Display(HMD)の普及に伴い,ゲームなど仮想空間への没入感を提示するディスプレイシステムに注目が集まっている.このような没入感を提示するディスプレイとしてはHMDのほか,これまでにCAVEシステムに代表されるImmersive Projection Technology(IPT)の開発が行われてきた.IPTはユーザの周囲の空間にディスプレイを設置するのに対し,HMDはユーザの目元に視界を覆うようにディスプレイを設置する.両システムともユーザの動きに合わせてインタラクティブに映像を変化させることにより,没入感を実現する.

しかしながら,いずれのディスプレイシステムにおいても幾つかの問題点が挙げられる.IPT環境の実現における問題点として,位置センサや複数のプロジェクタおよびスクリーンなど多くの高価なデバイスが必要であり,さらに可搬性に乏しいこと,設置場所が限られてしまうことが挙げられる.このようにIPTシステムは個人が気軽に使用するシステムとしては大規模であり,研究やイベント等に用途が限られてしまう.一方HMDは専用のデバイスを用意さえすれば容易に実現可能であり,主に個人を対象としたディスプレイシステムとして現在普及しつつある.しかしながらHMDはユーザの視界を覆うようにして使用する特性上,日常的な生活の中で利用するには適さず,加えてユーザの動作と映像の描画のずれや操作性等に起因する酔いが生じやすい.

そこで著者らは上記の問題を改善する没入型ディスプレイシステムとして,スマートフォンや標準的なPC,ディスプレイなどの汎用的な装置とクラウドサービスを用いた簡便なインタラクティブディスプレイシステムを提案する.本システムは,スマートフォンのカメラとARマーカを利用した相対位置計測によりユーザの位置情報を取得する.この位置情報に応じてリアルタイムに映像を変化させることで,ディスプレイを窓のようにして仮想空間を覗き込むような感覚を実現し,没入感を提示可能なインタラクティブディスプレイシステムをして動作する.本システムは,汎用的な装置およびクラウドを用いた手軽な構成により,酔いを抑えつつ日常生活の中での利用を実現する.

Publications

  • Satoshi Saga, Ryota Oki, Shusuke Kawagoe, Wanjia Zheng & Jiacheng Sun. AR-Technology-Based Locationing System for Interactive Content. In Proceedings of International Conference, HCI International 2015, 2015.
  • 大木 遼太, 河越 嵩介, 孫 嘉成, 鄭 万嘉 & 嵯峨 智. スマートフォンとクラウドを利用したインタラクティブディスプレイシステムの提案. In インタラクション2015予稿集, pp. 530-534, 2015.

Acknowledgement

  • 本研究は分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク (enPiT: Eduational Network for Practical Information Technology) プログラム内の一プロジェクトによって開発されました.